アブシンベル神殿で見る「カデシュの戦い」

エジプトのアブシンベル神殿は、ただの壮大な建造物ではありません。壁画や彫刻が数千年前の歴史を今に伝えており、その中でも特に注目すべきなのが「カデシュの戦い」を描いた壁画です。これは紀元前13世紀、エジプト王ラムセス2世がヒッタイト帝国と戦った戦いを描いたもので、古代エジプトの歴史における一大イベントです。
カデシュの戦いとは?
カデシュの戦いは、ヒッタイト帝国とエジプト帝国の間で行われた大規模な戦闘で、シリアのカデシュという場所で発生しました。ラムセス2世は、この戦いでヒッタイト王ムワタリ2世との戦闘を指揮しましたが、戦闘自体は決着がつかず、最終的には平和的な条約が結ばれます。この戦いの結果として、エジプトとヒッタイトの間で初の国際平和条約が締結され、後の外交に大きな影響を与えることになったのです。
壁画の目的
アブシンベル神殿に描かれた壁画は、ラムセス2世がこの戦いをどのように記録したかを物語っています。その目的は、単なる戦記としての意味だけでなく、王の偉大さを誇示することにもありました。壁画に描かれた戦闘シーンでは、ラムセス2世が圧倒的な力を発揮し、ヒッタイト軍に勝利したように表現されていますが、実際には戦い自体は両国にとって引き分けに近いものでした。それでも、エジプトの王として自国民に勇敢な姿を見せ、他国に対して強大さを誇示することが目的だったのです。
当時の社会状況
ラムセス2世が壁画に記したカデシュの戦いは、エジプト社会にとって大きな意義を持ちました。エジプトは当時、強大な軍事力を背景に支配を広げていましたが、その一方で周辺国との外交関係も重要な課題でした。ヒッタイトとの戦争後、和平条約を結ぶことになったことで、エジプトは単に軍事的な力だけでなく、外交的な手腕をも誇示することになりました。この和平条約は後に世界最古の平和条約としても有名で、古代エジプトがいかに巧妙に国際的な関係を築いていたかを示しています。
これから旅行される方へのアドバイス
アブシンベル神殿を訪れる際、壁画だけでなく、神殿そのものの壮大さにも圧倒されること間違いなしです。しかし、壁画をよく観察することで、当時のエジプト王国の軍事的、外交的な巧妙さを感じ取ることができまず。現地でガイドさんに説明をしてもらったり、事前に自分で本やYoutubeなどで勉強していくと、現地で実物を見た時の感動が変わってくると思います。是非現地に訪れてみてください。