【書籍解説】『女子大生、オナホを売る。』

起業や新規事業に興味がある方に、ぜひ一度手に取ってほしい一冊があります。
それが、**神山理子(通称:リコピン)**さんの著書『女子大生、オナホを売る。』です。
本書は、神山さんが大学在学中にオナホールという性具を開発・販売し、D2Cブランドとして成功に導いたリアルな体験記でありながら、マーケティングやコンセプト設計、事業戦略の要点が惜しみなく詰め込まれた、“起業の教科書”ともいえる一冊です。
今回は、この本を実際に読んで感じた学びを交えながら、以下の4点を中心にご紹介します。
1. 著者・神山理子(リコピン)さんについて
神山理子(かみやま りこ)さんは1997年生まれ、大学時代にオナホールを開発・販売し話題となった若き女性起業家です。
在学中からマーケティングや商品開発に強い関心を持ち、実際にメディア事業や海外でのスタートアップ経験を積みながら、独自の切り口で性具市場へ参入。性にまつわる偏見や、女性であることのハンデを逆手に取り、逆境の中でも着実にブランドを構築していきました。
現在はD2C事業やコンサルティング、情報発信など多方面で活動しており、「尖ったアイデア」を「売れる商品」に変えるプロセスを多くの人に伝えています。
2. 『女子大生、オナホを売る。』の基本情報
- 書名:女子大生、オナホを売る。
- 著者:神山理子(リコピン)
- 出版社:実業之日本社
- 発売日:2023年4月
- ジャンル:起業・D2C・マーケティング・エッセイ
- ページ数:約240ページ
一見するとセンセーショナルなタイトルですが、中身は極めて真面目で実践的。起業初心者だけでなく、商品企画やマーケティングに関わる全ての人にとって価値ある一冊です。
3. 『女子大生、オナホを売る。』の要点まとめ
以下は、本書を読んで特に参考になったポイントです(★は特に重要だと感じた部分)。
★1. 明確な理由を持つ商品を、漠然と売れる市場へ投入せよ
“なんとなくニーズがありそう”という市場は、競争が激しく価格競争になりがち。
そこで著者は、「この商品を“なぜ買うか”が明確なコンセプト」を持ったオナホを、漠然と売れるアダルト市場に投入。結果として、競合と戦わずに売れる道を切り開きました。
→ 「売れる市場 × 強いコンセプト」こそ、勝てる事業の方程式。
★2. 顧客が「少しだけ冒険でき」かつ「深い欲求に根差した」領域を選ぶ
神山理子さんが選んだ「オナホール」という商品は、まさにこの“ちょうどいい冒険”の象徴です。
多くの人にとって、性に関する商品は強い関心がある一方で、日常の会話や購買行動では避けられがちなジャンル。公には語らないけれど、誰もが何かしらの思いや体験を持っている——そんな“深い欲求”のある領域です。
神山さんはそこに、「この商品を“なぜ買うか”という明確なコンセプト」を加えることで、販売を伸ばしました。
→ 顧客が「少しだけ冒険でき」かつ「深い欲求に根差した」領域にこそ、未開のブルーオーシャンがある。
3. 競合と同じ視点で戦わない
市場にある既存商品がアピールしているポイントでは勝てない。だからこそ、盲点だった“かゆいところ”に注目する。たとえば「洗いやすさ」「パッケージの恥ずかしさ回避」「ユーザー心理の理解」など。
→ 商品設計では、本当に困っていることを最大の価値にするべし。
★4. 自分にしかできない参入障壁を見つける
「性具を女子大生が真面目に売る」という構図自体が、すでに参入障壁です。
- 自分の強みを活かせる
- 他社が倫理的に参入しにくい
- 周囲がやりたがらない(でも需要はある)
これらを掛け合わせれば、“代わりがいない”ビジネスになります。
加えて、「めちゃくちゃ好き」「異常に熱量がある」ことも、事業を伸ばすうえで超強力な武器になります。
5. インサイトは決め打ちせず、検証を重ねる
顧客の“本音”=インサイトは、机上では見つかりません。
インタビューやヒアリング、プロトタイプテストを繰り返すことで、ようやく「そう、まさにこれが欲しかった!」という商品に辿り着きます。
→ 仮説ではなく、検証からしか本物のコンセプトは生まれない。
6. コンセプトは「差別化 → 期待 → 確信」の流れで届ける
顧客は、まず「なんか違う」「なんか気になる」と思い、
商品説明を読んで「これいいかも」と思い、
購入直前には「やっぱり間違いない」と感じる。
この流れを意識して、キャッチコピー・商品名・説明文を設計することが重要です。
その他の印象的な学び
- 「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか」など、違和感のあるネーミングが記憶に残る
- 自分の購買行動を分析するクセをつける(なぜそれを買ったのか?)
- 出会った人に「最近ハマってるもの」を聞いてみると、新しいアイデアが生まれる
- SEOよりも「買いたくなるネーミング」を優先する
- アダルト領域で広告制限があるなら、メディア掲載・口コミ・コアファン育成で勝負する
4. この本を実践に活かすアクションプラン
この本を読んで終わりにしないために、私は次の3つのアクションプランを考えました。
■① 自分だけの“ズラし領域”を探す
今ある市場の中で、「自分がちょっと変だと思っているポイント」「他の人が気づいてない不便さ」に目を向けてみる。(そこにこそ、“誰にも気づかれていない需要”が眠っているかもしれない。)
■② 熱量で押し切れる分野を探す
「自分はこれが好きで仕方ない」「朝まで語れる」「暇さえあれば調べてる」そんな“狂った熱量”を持てるテーマがないか普段から意識して探す。
■③ 顧客の声を拾うクセをつける
- なぜこれが選ばれたのか
- どこで買われたのか
- 使った感想はどうか
友人との会話でも、自分の購買体験でも、上の観点で考えてみる。(インサイトのヒントは日常の中にある。)
まとめ:売るのは”商品”ではなく、”思想”である
『女子大生、オナホを売る。』は、奇抜なタイトルに反して、とても誠実で実践的な起業・マーケティングの教科書です。
神山理子さんは、“性”というタブーを通じて、
「ビジネスは、人の本音に寄り添うこと」
「尖ることが、最大の差別化になること」
そして「誰にもできないことを、自分の価値にする」ことを教えてくれます。
副業を考えている人、D2Cやブランドを立ち上げたい人、あるいはちょっと人生を面白くしたい人。この本は、あなたの“挑戦したい心”に火をつけてくれる一冊です。
おすすめ度:★★★★★
特に刺さる人:起業家・副業志望・マーケター・商品開発職・尖りたい人